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これからの高校サッカーはどのように変化する? 今大会が予感させた“2,3年後の選手権の姿”

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 青森山田と流経大柏。今年の高校サッカー選手権の決勝も、下馬評の高かった優勝候補同士の対決となった。大会前の時点で「出場チームの中で最も強い3チームを挙げよ」と尋ねられれば、ほとんどの方がこの2校を入れるのではないだろうか。それほどまでにこの両校は突出していて、順当な勝ち上がりだった。まるで往年のバルセロナとレアル・マドリードが綺麗に決勝で交わることになったような、そんな決勝のカードだった。


 だが、カードという観点ではなく、試合内容で言えば、最も決勝戦らしかったのは青森山田と尚志の準決勝だろう。堅守速攻とハイプレスを代名詞とする青森山田、華麗なパスワークから守備網を打開する尚志。対照的なフットボールを極めた両チームが、互いの良さを消し合うのではなく、自分たちの良さをぶつけ合う、文字通り“殴り合い”を演じてみせた。


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 青森山田はスピードとフィジカルを活かした攻撃を展開するのに対し、尚志はテンポの良いパス回しで相手陣地への侵入回数を増やした。そして、ゴールもまた両チームともに自らの真骨頂を提示するような形となった。


 1-2で迎えた後半18分、青森山田のコーナーキックの場面でニアに鋭いボールを放り込むと、アビスパ福岡内定のDF三國が身長192cmを活かした強烈なヘディング弾を叩き込み、最大の武器であるセットプレーからネットを揺らしたのに対し、2-2で迎えた同28分には尚志が流れるようなハイテンポのワンタッチプレーから裏に抜け出したFW染野唯月がゴール右隅に流し込み、まさに“ティキ・タカ”を彷彿させるゴールを奪ってみせた。


 まさしくリバプール対マンチェスター・シティのようなコントラストがぶつかり合った激戦となったが、最終的にはPK戦を得意とする青森山田が試合を制することになった。決して運試しではなく、PK戦を徹底的に訓練し対策してきた青森山田の努力の賜物だった。


 話は変わるが、近年の高校サッカーはとにかく「走れるチーム」が強い。どこよりもハードワークを惜しまず走り抜いたチームが勝ち進む傾向にあり、これは連日で試合を行わなければならない過密日程も大きく影響している。青森山田と流経大柏も、優勝候補筆頭の強豪校であると共に、大会で最も走行量の多い2チームでもある。


 筆者は4年前から選手権の取材を行っているが、どの大会でも選手にチームと個人の強みを尋ねると、ほとんどの選手が異口同音で「ハードワーク」と答えることがほとんどだった。それだけ運動量と献身性は選手権に置いて不可欠な要素となっている。


 しかし、選手権の時代はこれから変革を迎えるのかもしれない。2,3年後のスタイルの移行を予言しているのは、流経大柏の名将、本田裕一郎監督だ。


「プレスが軸となるスタイルは、これから2、3年続くと思うが、その後は、そのプレスを攻略するための、技術の時代がやってくる。今の高校サッカーはドカ蹴りのイメージが強いと思うが、ボールをしっかりとつなぐ技術が中心となる時代がやってくると思っている。プレスをかけられたうえで、それをかいくぐれる技術が“本物の技術”ですね」


 準々決勝の秋田商戦後、本田監督はハードワークが主体となる時代が終焉を迎え、それを淘汰するように技術を軸としたスタイルへの変革を迎えると明言している。


 世界を見渡しても、スペインがポゼッションサッカーで2008~12年にかけて、ワールドカップ(W杯)優勝、欧州選手権制覇を達成し、史上初となる主要国際大会3連覇を達成するなど黄金期を築いた。その後はドイツの縦に速いコンパクトなサッカーに主流スタイルが移り変わると、ロシアW杯ではフランスが堅守速攻のスピーディーなサッカーで優勝を飾り、新たなトレンドを提示した。


 そして選手権において、実際にハードワークとハイプレスを凌駕する技術の時代の到来は、すでに今大会から片鱗を示している。それこそが、“現トレンド最強”青森山田を準決勝で苦しめた尚志の精密なポゼッションサッカーだった。流経大柏と準決勝で対戦した瀬戸内も選手権初出場ながらベスト4と輝かしい成績を残し、そのスタイルは技術力の高いパスサッカーだ。


 結果的に決勝は青森山田と流経大柏となり、ポゼッションサッカーの2チームは準決勝で散ることになったが、質の高い技術力を見せつけた彼らは間違いなく選手権の新時代の到来を予感させる存在として記憶に刻まれることとなった。


【了】


城福達也●文 text by Tatsuya Jofuku




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