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イニエスタとトーレス、取り巻く取材環境の違いは? 記者の目線から見る両スター選手の相違点

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 2018年も残り数日で終わりを迎えようとしている。今季のJリーグは川崎フロンターレの連覇で幕を閉じたが、MFアンドレス・イニエスタ、FWフェルナンド・トーレスの元スペイン代表コンビが日本へやってきたことが大きなトピックスとなった。イニエスタはヴィッセル神戸に、トーレスはサガン鳥栖に加入したことで、Jリーグは国内だけでなく世界からも取り上げられるようになった。


 イニエスタとトーレスは15歳で世代別代表の招集を受けた際、同じ相部屋となったことをきっかけに親しくなったという。そしてその後、両選手ともにそれぞれバルセロナ、アトレティコ・マドリードを象徴する存在となり、スペイン代表でも黄金期を築く礎となった。34歳と同い年の2人は同時期に世界的な名手へと飛躍し、同時期にクラブを退団、同時期にJリーグ参戦を決断するという、まるで運命を共有するかのようなキャリアを歩んでいる。


 一方で、それぞれ加入したJクラブの情勢は異なっていた。神戸は上位争いに参戦するため、鳥栖は残留争いで生き残るために、スーパースターの獲得に踏み切った。また、神戸は即座に“イニエスタシステム”へとシフトするべく、イニエスタが快適にプレーできる環境を整えたのに対し、鳥栖はチームカラーである堅守速攻のスタイルにトーレスを組み込む姿勢を一貫。トーレスがチームに合わせる状況になっていた。


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 イニエスタとトーレスを取り巻く環境の違いは、試合後の取材エリアにも浮かび上がっていた。筆者は川崎のホーム等々力陸上競技場で行われた神戸戦、鳥栖戦ともに現地に足を運び、取材を行っていた。両選手ともに性格が生真面目であることもあり、取材には真摯に応じる姿勢を示していた。その一方で、両選手に対する所属クラブの対応に色の違いが出ていた。


 イニエスタはアウェイ戦にも関わらず、専用の特別ブースが設置されていた。取材エリアに姿を現わすと、まずは母国のスペインメディアの取材に応じ、その後、特別ブースへとやってきた。広報部から「イニエスタに対しての質問は2つまで」という依頼が出ており、記者から早い者勝ちで2つの質問を投げかけられる。それに応じると、4,5分ほどで取材は終わり撤収していった。


 一方、トーレスは特別ブースなどが特に設けられず、他の選手と同じように取材エリアに現れ、囲み取材に応じていた。特に質問の数に制限がなく、記者からの質問に順番に応えていた。他の日本人選手と同様、質問が途絶え、頃合いとなった時に広報部が撤収する旨を伝え、時間にして12,3分ほどでバスへと向かっていった。


 推測の域は出ないが、両選手の取材環境の違いは、両クラブにおける獲得の際の状況が影響していると思われる。神戸は、いわば楽天の“ポケットマネー”でイニエスタの年俸となる約32億を賄っているに対し、鳥栖はスポンサーからの支給に加えて、DAZNからの投資を受けて、トーレスの年俸にあたる約6億円を担保しているようだ。


 そのため、イニエスタに関しては、神戸が独自の判断に基づく取材の対応を施すことができるのに対し、トーレスはDAZNへの貢献も配慮した上で、極力メディアに取り上げられる環境を優先しているのかもしれない。現に、トーレスはDAZNのCMにも積極的に起用されている。


 もちろん、取材はメディア側よりも選手面のケアを第一に優先すべきものであることは間違いないため、どちらの方が良い対応かというのは比較できるものではない。質問が多くできるから、という視点は、メディア側のエゴにすぎないからだ。


 イニエスタは限られた時間で分かりやすく丁寧な質疑応答を行っており、トーレスは至近距離で多数の記者に囲まれるも嫌な顔一つ見せなかった。両スター選手の器の大きさを加味した上で、クラブの事情や背景によって取材環境が異なってくるのも、一つの面白みと言えるかもしれない。




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【了】



城福達也●文 text by Tatsuya Jofuku

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