0コメント

年間MVP受賞の家長、2年前の川崎加入の決め手となった「中村憲剛」という目標に届いた瞬間

スポンサーリンク



 2018年度のJリーグ表彰式である「Jリーグアウォーズ」が18日に開催され、今季最も活躍した選手に贈られる最優秀選手(MVP)に川崎フロンターレのMF家長昭博が選出された。


 家長は6ゴール7アシストと数字上では突出した成績を残したわけではないものの、ピッチ上では圧倒的な存在感と、日本人離れした個の力を発揮し、川崎の連覇に大きく貢献していた。


 川崎はチームカラーである徹底的なポゼッションサッカーで連覇を達成したわけだが、パスサッカーを貫くが故に、“川崎対策”として自陣で守備を固めるチームを相手に、どうしても攻めあぐねてしまう局面も少なくなかった。


 しかし、そんな中でこそ輝きを放ったのが家長だった。ワイドでボールを受けると、瞬発力を活かしたドリブルで相手を置き去りにし、当たり負けしない強靭なフィジカルで止めようのないアタッカーとして強烈なインパクトを残した。


 また、川崎に加入してからは運動量と献身性が目に見えて向上し、課題とされていた守備面も大幅に改善。負傷離脱することもなく、今季は特に“欠点の見当たらない選手”として文句なしのMVP受賞となった。


 家長の受賞により、2016年度にMVPに輝いたMF中村憲剛から3年連続で川崎から輩出されたことになったが、実はこの年間MVPこそ、家長が川崎というクラブに加入した理由であったことを、ご存知だろうか?


スポンサーリンク








 時間を2017年1月に巻き戻そう。この日行われたのは、2017年度Jリーグ開幕に向けた新体制発表会だった。大宮アルディージャから川崎への移籍が決定したばかりだった家長は、新加入選手として壇上に登場した。


 新体制発表が終了した後、記者に向けた囲み取材が行われた。その際、筆者は迷わず家長の元へと歩み寄った。大宮の主将としてチームを5位に導き不満のないシーズンを送っていたはずであり、尚且つ、他のクラブからも数多くのオファーが届いていた中で、なぜ2列目のポジション争いが熾烈である川崎への移籍を決断したのか、気になっていたからだ。


 数人の記者に囲まれた家長は淡々と質問に答えており、タイミングを見て、新天地に川崎を選んだ決定打について尋ねた。すると、家長が理由として挙げたのは、中村の名だった。


「30歳を迎えて、さらなる挑戦をしたかった。このクラブには憲剛さんという、36歳の年齢でMVPを獲得した選手がいる。自分も攻撃的なスタイルを築く川崎で、成長したい。川崎はパス回しやトラップが細かく正確。身体能力はもう伸びないが、そういう要素やポジショニングはまだまだ伸ばせる」


 当時、中村は36歳という歴代最年長となる年齢で年間MVPを受賞していた。喜びの言葉を口にしていた一方、川崎は当時チャンピオンシップで鹿島アントラーズに敗れ、悲願のJ1優勝を逃す悔しさも味わっていた。


 あれから2年の月日が経ち、あの時中村が立っていた壇上には、家長が立っていた。32歳での年間MVP受賞。中村と同じように照れ笑いを浮かべていたが、一つ違うのは、当時無冠だった川崎がJ1連覇という偉業を達成するまでのチームに変貌していることだ。


 考えてみれば、家長が川崎に加入してから、チームは連覇を達成している。例年に渡り、優勝まであと一歩が足りなかった川崎だが、家長の存在こそが、このチームにとっての“ラストピース”だったのかもしれない。


「今年に関しては、アキだってわかっていましたよ」。2年前に家長が年間MVPの目標として川崎へ加入する決め手にもなった中村はJリーグアウォーズ後、誇らしげに一言、そう口にしていた。



【了】



城福達也●文 text by Tatsuya Jofuku

この記事へのコメント