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“人生の恩人”トーレスの初取材【前編】 夢にまで見た"神の子"がついに目の前に…

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 2018年8月15日。この日はナイトゲームだったが、記者席に座っているだけでも汗が頬をつたうほどの蒸し暑さが等々力陸上競技場を包んでいた。


 普段、試合開始の30分前にスタジアムに足を運んでいるが、この一戦に関しては約2時間前には到着していた。試合前のウォーミングアップを初めから見るためだ。そして、同じような考えでいるのは観客も同じだったようで、普段よりも席の埋まるペースは明らかに早かった。それもそのはず、この日等々力にやってきたのは、あの世界的ストライカーである、FWフェルナンド・トーレスだからだ。


 アトレティコ・マドリードの下部組織で育ったトーレスは、16歳の若さでトップチームに昇格すると、19歳にはキャプテンマークを託されるなど、10代で世界に名を轟かせる選手となったことから“神の子”という異名まで授かることになった。


 そして、リバプールで世界最高のストライカーへと飛躍し、バロンドールで3位に入賞する功績も残した。チェルシーに移籍してからはパフォーマンスは下降線を辿り、ACミランを経て、アトレティコへと復帰。そして、今夏にサガン鳥栖への加入を決断した。


 この日、筆者はスタジアムに到着してから手のひらの汗が引くことがなかった。鼓動が早まっていることも実感できるほどだ。それほど、筆者にとって、トーレスという選手は特別な存在だった。その理由は単純明快、少年時代から、サッカーの仕事に携わりたいと思ったきっかけこそ、トーレスだったからだ。


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 リバプール時代、元イングランド代表MFスティーブン・ジェラードからの鋭いスルーパスに抜け出したトーレスが相手DFに追いつく間を与えぬほどの振りの速いシュートをネットに突き刺す。このようなシーンを毎週、ブラウン管越しに目を輝かせながら観戦していた青春期を過ごした。男子校出身の筆者は、青春期=トーレス、と言っても過言ではないほど、このストライカーに魅了されていた。


 そんな選手が、Jリーグにやってくる奇跡に立ち会った。そして、筆者はあの頃の少年から、サッカーライターという立場になっていた。これを奇跡と呼ばずとしてなんと呼ぶのか。サガン鳥栖への加入を発表したストリーミングを見ていた筆者は、本当に文字通り空いた口が塞がらなかったほどだ。


 話を試合に戻そう。トーレスがウォーミングアップにピッチへと登場すると、現地に訪れていた観客からは大きな騒めきが沸き起こった。本物のトーレスだ。実際に肉眼で見ることで、その実感を噛み締めるような、そんな騒めきだった。


 筆者も当然、登場の瞬間に前のめりになった。186cmという高身長にも関わらず赤子のような顔の小ささ、ランニングする時に一切上半身のブレない体幹の強さ。そして、額縁にでも入れたいほどの美しき胸トラップ。間違いない、トーレスだ。「本当に、来たんだな…」。筆者は、思わず記者席でそう独り言を呟いていた。


 筆者にとって、二度と忘れることのない現地取材の一戦が、まもなく始まろうとしていた。



(後編に続く)



【了】


城福達也●文 text by Tatsuya Jofuku


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